

今宵は中秋の名月とて団子に薄ぃ供えた縁側から望月望むははなまるの、似合いもしねぇ随分殊勝な面持ちぁ暑さも猛き夏の陽の少し和らいだ頃日のしっとりとした空気と優しい虫の音が其うさせるのかねぇ。


何でも昔ゃぁ芋名月だとか称したそうで、ぃやぃやはなまるよ、秋の日の澄んだ夜空にぽっかり浮かぶジャガイモみてぇなお月様…てぇ訳ぢゃぁなくってな、まったく食いしん坊の本領発揮だね、而もお前其れ、揚げて塩振ってあんだろ、好い加減にしろやぃ。


薄と一緒に供えるなぁ馬鈴薯や薩摩芋ぢゃ無くって里芋だてぇこって栗名月なんてぇ十三夜の月見もあるてぇ話だからやっぱり其の時期の収穫物を供えたんだろうなぁ、如何にも作物収穫に対する自然への感謝の気持ちぃ現れてる奥床しい風習ぢゃねぇの、


ってったって、はなまるにとっちゃぁ其んな事ぁ何ぅでも好かったね、芋にしろ団子にしろ構うこた無ぇ、孰れにしろお口ん中ぁ放り込むんだ。
先刻迄の神妙な面ぁ何処やったぃ、まぁったく満面の笑みぃ浮かべやがって、結局頬っぺたぁ膨らませちまぅことぉなんだよなぁ、お前さんにゃぁやっぱり食欲の秋が似合ってらぁな。