

楽しさに紛れ時間の経つのも忘れ、ついついのこって家路につくのが遅れちまぅてなぁ良く有るこって、例に漏れずのはなまるの今日とて暗え夜道の帰り道を小走りに行くてぇと…


不図前方右手にぽっかりと、夏の夜ならぬ今ぁ霜月吐息も白い、小春とて秋の日の釣瓶の如く落ちたれば最早冬の気配も濃きに、此の世を果敢無む蛍でもあるめぇて思う間もなく見る見る内に…


こちとらとても夏の日の宵でもあるめぇに、妖怪変化たぁ面妖な、怪しく笑う目玉が二つ、驚れぇたの驚かねぇのてぇ、まぁはなまるの身ぃなっちやっておくんなせぇ、此奴が不気味な笑みを光らせ乍、前方上手から下手にこっち向いたまんま蟹歩きで横切りゃぁ、妙なしかめっ面よりゃぁ返って恐怖も募るボンヤリ光る笑い顔に、吐く息だけぢゃねぇ、背筋迄凍っちまぅてぇもんさね。


一瞬身の縮んだはなまるの横手ぇ前方へ追い越しちく自動車のヘッドライトが総てを正しく明らかにしてくれたてなぁ、丁度こいつのヘッドライトが直線の遠方から、道路ぉ横断する自転車の廻る両輪に貼った安全反射ステッカーへ全く上手ぇ具合に反射したてぇ怪現象…幽霊の正体見たり枯れ尾花てなお粗末。